ASICSの「NOOSA TRI 16」は、元来トライアスロン競技向けとして誕生した系譜を持ちながら、一般ランナーのデイリートレーナーやテンポ走用として世界中で熱狂的な支持を集める軽量パフォーマンスシューズです。ミッドソールに先進的な「FF BLAST PLUS」を新採用し、従来のスムーズな重心移動に「弾むようなバウンス感」が加わった本作の真価を徹底レビューします。
Review
トライアスロンの血統を受け継ぐ、
弾むようなスムーズな重心移動で走りが変わる軽量靴。
特におすすめなランナー
- 軽快なテンポ走を楽しみたい
- トライアスロンに挑戦したい
- 濡れた路面でも滑りたくない
まずは結論とスペックから
このシューズがどんな一足なのか、評価と基本データを先に押さえます。
こんな疑問を解消します
asics noosatri16 基本スペック
noosatri16の最大の変更点は、ミッドソール素材が従来のFLYTEFOAMから「FF BLAST PLUS」へとアップデートされたことです。クッション性と反発力が劇的に向上しつつ、シューズ全体で約15gの軽量化(前作比)を達成しています。
| 価格 | 16,500円(税込) |
|---|---|
| 重量(メンズ) | 約215g(メンズ27.0cm目安/公式値。実測では220〜223gという報告も) |
| ミッドソール | FF BLAST PLUS (GUIDESOLEロッカー構造) |
| アッパー | エンジニアードメッシュ |
| スタック / ドロップ | ヒール34.5mm / フォア29.5mm(ドロップ5mm) |
| アウトソール | ASICSGRIP |
前作 NOOSA TRI 15 からの進化
結論として、NOOSA TRI 16で一番変わったのはミッドソール素材です。前作のFLYTEFOAMから「FF BLAST PLUS」へ刷新されたことで、クッション性と反発力が劇的に向上しつつ、約15gの軽量化も同時に果たしています。
走った体感としては、前作の硬めでカチッとした接地感から一転し、着地時に程よい柔らかさとバウンスを感じるライド感へと変化したことが一番の違いです。前足部の反り上がり(トー・スプリング)がより強く機能し、足を置くだけで自然とコロンと前に転がるスムーズな足運びが強化されています。
各パーツの構造
ミッドソール
ミッドソールは、単一の「FF BLAST PLUS」フォームで構成されています。前作で採用されていたFLYTEFOAMと比較して、より軽量でありながらエネルギーリターン(反発性)が高いことが特徴です。ラボでの硬度テストによれば、フォームの硬度は33.6 HAを記録しており、市場のランニングシューズの平均値(約35.5 HA)よりもやや柔らかく、バランスの取れたソフトな衝撃吸収を提供します。エネルギーリターンの測定では、かかと部で53.9%、前足部で60.9%という数値を叩き出しており、この価格帯のシューズとしては非常に優秀な反発力を備えています。さらに、「GUIDESOLEテクノロジー」と呼ばれるロッカー構造を採用し、前足部にかけてソールが急激に上へと反り上がることで、足首関節の屈曲を抑えてふくらはぎの筋肉への負担を軽減します。カーボンプレートやプラスチック製のシャンクを持たない柔軟な構造でありながら、ミッドソールの側面の壁(サイドウォール)を高くせり上げる「3D GUIDANCE SYSTEM」により、着地時の横ブレを物理的な枠組みとして抑制しています。
アッパー
アッパーには、極めて軽量で通気性に優れたエンジニアードメッシュが採用されています。通気性テストにおいて最高評価を獲得するほど風通しが良く、真夏のランニングやトライアスロンのバイクパート直後の火照った足でも、内部をドライに保つよう設計されています。トライアスロン競技における「トランジション(種目間の着替え)」のタイム短縮を支援するギミックも散りばめられており、シュータン上部には指を引っ掛けるための大きな穴、かかと部には掴みやすい大型のヒールプルタブが配置され、靴ベラを使わずに一瞬で足を引き入れることが可能です。
アウトソール
アウトソールには、ASICSの最高峰トレイルランニングシューズやレーシングモデルにも採用されている「ASICSGRIP」が全面に広範囲にわたって配置されています。濡れたアスファルトや白線の上、急なカーブにおいても強烈なトラクションを発揮します。前足部の中央には縦方向の深いスリット(溝)が刻まれており、単なる軽量化のための肉抜きではなく、足の自然な動き(蹴り出し時の足の骨の広がり)に合わせてアウトソールが柔軟に変形し、地面との接地面積を最大化する生体力学的な設計です。
買う前に知っておきたいこと
サイズ感・実際の使用感・耐久性と、寿命を伸ばす履き分けの考え方です。
サイズ感はどう?
先に結論を言うと、ハーフサイズアップ(普段より0.5cm大きめ)がおすすめです。前足部の強い反り上がりの影響で、足の収まり方が他のASICSシューズとは少し異なります。
ハーフサイズアップ(普段より0.5cm大きめ)がおすすめ
- 足幅(ワイズ):標準的(STANDARD)ですが、中足部はタイトです。
- 甲の高さ:標準的ですが、シューレースで調整しやすい設計です。
- 他ブランドとの比較:HOKA MachやNB Rebelと同サイズで比較すると、縦幅(レングス)が短く感じる傾向が強いです。
- 特記事項:鋭いトー・スプリング(つま先の反り上がり)により、走行中に足が前方に押し出され、指先がアッパー先端に当たりやすいという報告が国内外で多発しています。
実際に履いたランナーの声
派手なルックスとは裏腹に、走行性能は「過小評価された名機」と絶賛する声が多く集まっています。一方で、フォームの柔らかさに対する好みの分かれや、サイズ感に関する注意喚起も見受けられました。
ロッカー形状によるスムーズな重心移動が素晴らしく、ペースを保ったまま足を回すのが非常に楽です
ASICSGRIPのグリップが強烈で、雨上がりの濡れた路面でも全く滑る気がせず安心して踏み込めます
通気性が抜群で水抜けも良く、真夏のランニングでも蒸れずに快適に走れます
一方で、次のような気になる声もありました。
つま先が靴の先端に当たりやすく、いつものサイズで買ったら少し小さく窮屈に感じました
前作の硬い反発が好きだったので、FF BLAST PLUSの柔らかさは接地感が少しぼやけて感じてしまいます
軽量で柔らかいフォームゆえに、300kmを超えたあたりから前足部のクッションのヘタリを感じ始めました
どのくらい走れる?耐久性の目安
アウトソールのラバーは非常に強靭ですが、ミッドソールのクッション寿命には少し注意が必要です。
アウトソールは頑丈だが、フォームの反発低下は早め
- アウトソールに採用されているASICSGRIPは非常に耐摩耗性が高く、悪天候や荒れた舗装路を走っても削れにくいと高く評価されています。
- ミッドソールのFF BLAST PLUSは軽量で柔らかい分、耐久性はやや控えめです。300〜400km程度で前足部のフォームが圧縮され、特有のバウンス感が失われ始めたという実測報告も挙がっています。
- アッパーやアウトソールが綺麗な状態でも、ライド感にもたつきを感じ始めたらジョグ用への降格や買い替えのサインと捉えるべきです。
履き分けの重要性
NOOSA TRI 16は、その軽さと転がる推進力を活かして、軽快にペースを刻む日に最も輝きます。クッションの底付き感を防ぐため、長時間のロング走やリカバリー用途には、よりボリュームのあるモデルを組み合わせるのが理想的です。
RECOVERY
リカバリージョグ・LSDの日
疲労が溜まった足には、極上のクッション性と柔らかなフィット感を持つNIMBUSが最適です。NOOSAのやや薄いヒールを補う役割を果たします。
LONG
距離走・ロング走の日
超厚底でありながら軽量なFF LEAPフォームを搭載しており、足へのダメージを最小限に抑えつつ長距離を効率よく走り切るのに適しています。
他の選択肢と比べてみる
練習メニュー別の相性と、ライバル2足との違いから最終判断します。
どんな練習に向いている?
軽快な足捌きが要求される、中程度のスピード練習やテンポ走において最もポテンシャルを発揮します。
フォームが柔らかいとはいえ絶対的な厚みは控えめなため、疲労抜きにはやや不向きです。
クセのない接地感で、毎日の軽いジョギングでも気持ちよく使用できます。
ロッカー形状が足を前に運んでくれるため、一定のペースを維持する走りに最適です。
カーボンプレートはありませんが、軽量であるため十分に対応可能です。
ハーフマラソンまでの距離や、トライアスロンのランパートであれば優秀な選択肢です。
ライバルシューズとの比較
同じ用途で比較されやすい2足と並べてみます。
noosatri16と比較したいシューズを選ぶ
HOKA Mach 7 との違い
Mach 7は、ヒール厚が37.0mmとやや高めで、スーパークリティカルフォームEVAによる「しっかりとした弾き返し」と「ソールの広さによる安定感」が特徴です。対するNOOSA TRI 16はスタックハイトが34.5mmとやや低く、強い反り上がり(トー・スプリング)を活かした「前へ転がるようなライド感」が持ち味です。足の回転数を上げるアジリティと、濡れた路面での強烈なグリップ(ASICSGRIP)を重視するならNOOSA TRI 16が優位ですが、より長距離でのクッションの底付き感のなさを求めるならMach 7が適しています。安定感のある弾き返しを求めるならMach 7、転がるような軽快さを求めるならNOOSA TRI 16です。
New Balance FuelCell Rebel v5 との違い
FuelCell Rebel v5は、PEBA素材とEVAをブレンドしたFuelCellフォームを搭載しており、接地時に深く沈み込んでから強烈に跳ね返るような、トランポリンに似た非常に柔らかいバウンド感が最大の特徴です。一方でNOOSA TRI 16は、過度な沈み込みを抑えた適度な柔らかさであり、3D GUIDANCE SYSTEMとロッカー形状によって足を機械的に前へ運ぶため、接地時の横ブレの少なさや足運びの安定感はNOOSA TRI 16の方が勝ります。トランポリンのような弾むバウンス感を求めるならFuelCell Rebel v5、機械的に前へ運ばれる安定した転がり感を求めるならNOOSA TRI 16です。
よくある質問
Qトライアスロン競技に出ない一般ランナーが履いても問題ありませんか?
A全く問題ありません。着脱のしやすさや水抜けの良さはトライアスロン向けですが、基本構造は優秀な軽量ランニングシューズです。普段のジョグやテンポ走、ハーフマラソン用のシューズとして多くの一般ランナーに愛用されています。
Q前作のNOOSA TRI 15と比べてどちらを買うべきですか?
Aより柔らかいクッションとバウンス感を求めるなら今作(16)をおすすめします。ただし、前作のやや硬めでダイレクトな接地感が好きだった方は、あえて値下がりしている15を探すのも賢い選択です。
Qフルマラソンのレース本番で使えますか?
Aサブ3〜サブ3.5レベルの脚力が仕上がっているランナーであれば可能ですが、後半の疲労を考慮すると、フルマラソンにはGEL-NIMBUSやNOVABLASTなど、もう少しクッションに厚みがあるモデルの方が安心です。
Q雨の日のランニングでも滑りませんか?
Aアウトソールに「ASICSGRIP」を採用しているため、雨に濡れたアスファルトや白線の上でも非常に高いグリップ力を発揮します。天候を問わず安定して走れるのはこのシューズの大きな強みです。
Q初心者の最初の1足目として向いていますか?
Aドロップが5mmとやや低めで、かつ前足部のカーブが強いため、ふくらはぎやアキレス腱に負担がかかりやすい傾向があります。初心者の方は、GT-2000などのより安定感とヒール高のあるモデルから始めることをおすすめします。
まとめ
NOOSA TRI 16は、トライアスロン向けという独自の進化を遂げながらも、軽量デイリートレーナーとして非常に高い完成度を誇る一足です。新採用のFF BLAST PLUSによる心地よいクッションと、強力なASICSGRIP、そして足を自然に前へ運んでくれるロッカー形状の組み合わせは、軽快にテンポ走をこなしたいランナーにとって心強い相棒となるでしょう。プレートレスでありながら高い推進力を発揮する設計は、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢と言えます。
一方で、軽量化と引き換えにフォームの耐久性はやや控えめであり、また前足部のカーブが強いため、サイズ選びにはハーフサイズアップを検討するなど慎重さが求められます。クッションの底付き感が気になる長距離走にはGEL-NIMBUS 28を組み合わせるなど、用途を絞ってローテーションに組み込むことで、このシューズの持つ「痛快な転がり感」を最大限に味わうことができます。
[プロフィール]
- ラントク運営 じぇーぱぱ
- 中学、高校時代は100mを専門に活動
- 現在は週2回の練習で、12月のハーフ120分を目指して再スタート中
この靴を履いている方は、Xで教えてください。
