私はいま、AIにランニングコーチをやらせています。再開して1本目を走ったあとに返ってきたのは、「1本目はペースが速すぎた(5:46/km)」という一文でした。呼吸に余裕がある強さまで落とすように、と続いていました。自分ではジョグのつもりだったのに、です。
なぜ自分で決めて走ると強さがずれるのか、コーチに何を頼めばいいのかは、別の記事にまとめました。この記事はその続きで、AIをコーチにする手順だけを書きます。
私が実際に使っている形をもとにしたテンプレを置きます。コピーして、読みながら試せます。
やることは3つだけ
- スマホに入っているAIを開く
- テンプレの4か所を埋めて送る
- 走ったら、結果を同じチャットに返す
1. 使うAIは、スマホに入っているもので始める
最初にどのAIを選ぶかで止まる必要はありません。練習の相談という用途に限れば、差はほとんど出ないからです。
ChatGPT・Gemini・Grok、どれでも始められる
どれでも始められます。3つとも無料で使えて、スマホアプリがあり、音声入力も画像の読み取りもできます。無料の範囲では、使える回数に上限があるものもあります。
すでに入っているものがあるなら、それを開いてください。入っていなければ、アプリストアで名前を検索して入れるだけです。開くと、下のほうに入力欄があります。貼り付け先はそこだけです。
まず1つ使う。比べるのは、慣れてからで構いません。
2. 渡すのは「自分の条件」
同じAIでも、返ってくる内容は渡した条件で変わります。条件を渡さずに聞くと、誰にでも当てはまる一般論が返ってくる。当たり前のようですが、ここがいちばん大きな差になります。
渡す条件は、4つです。
埋めるのは4か所だけ
| ① 走れる回数 | 週に何回走れるか。[例:週2回] |
|---|---|
| ② 今の走力 | だいたいで構いません。[例:5km走るのがやっと][例:ハーフを2時間5分。普段は5〜10kmを1kmあたり6分前後] |
| ③ 目標 | [例:12月のハーフを2時間以内][例:まず5km走れるように] |
| ④ 使える時間 | 1回にどれくらい走れるか。長めに走れる曜日。[例:平日は1回40〜60分。長めに走れるのは週末だけ] |
④を書かないと、平日に90分走るようなメニューが返ってくることがあります。書けない欄は「分かりません」で構いません。
強さは「会話」で分ける
このテンプレでは、走る強さを会話で3つに分けて指定してもらいます。ペースや心拍の数字は、人によって楽にもきつくにもなるからです。
走りながら「今日は朝から天気がよくて、走るのが気持ちいいです」くらいの文を、ひと息で小声で言ってみると分かります。
会話は最初の物差しです。走るたびに会話と心拍をセットで返していくと、自分の「楽」がどのくらいの心拍か見えてきます。そうなったら、時計での管理に移って構いません。
最近測った自分の閾値の心拍(ここを超えると急にきつくなる境目)をすでに知っているなら、最初から心拍で管理してもらっても構いません。その場合は、テンプレの強さの行を「各回の強さは心拍で指定してください。私の閾値の心拍は[例:165]です」に書き換えて送ってください。
送るテンプレ
[例:〜]の部分を、かっこごと自分の内容に書き換えて送ってください。
最後の5行に、それぞれ意味がある
- 足りない情報があれば聞き返して:AIは、足りない情報を勝手に仮定して答えることがあります。先に聞いてもらうほうが、ずれが少なくなります
- 一般論は省いて:誰にでも当てはまる話を削らせて、自分がやることだけを残します
- 強さは会話で:時計を見なくても、走りながら確かめられます
- 守る数字を1つ、理由も:走っている最中に3つも4つも覚えていられないので、1つのほうが守りやすくなります。理由が書いてあれば、おかしいときに気づけます
- 結果を送るので次の週を:1回きりの相談ではなく、毎週続く前提でメニューを組んでもらうためです
返ってきた例
違いが分かるように、自分の条件を書かずに「12月のハーフマラソンに向けて練習しています。今週の練習メニューを教えてください」とだけ聞いた場合も並べます。送るのは上のテンプレの1回だけで構いません。
▲ ChatGPT。条件を書かずに聞いた返答
次に、別のチャットでテンプレに条件を入れて送ると、メニューの前に聞き返してきました。
▲ テンプレの「足りない情報があれば、先に聞き返して」が効いている
聞き返されても慌てなくて大丈夫です。分かる範囲で答えると、次のメニューが返ってきました。
▲ 答えたあとに返ってきた、今週のメニュー
どちらも同じAIに、ハーフに向けた今週のメニューを聞いています。違うのは、自分の条件と答え方の指定を渡したかどうかだけです。
ネットの練習法が自分に当てはまらないのは、練習法が足りないからではありません。自分の条件に置き換える人がいなかったからです。
3. あとは、走るたびに一言返すだけ
ここがいちばん大事です。1回メニューをもらって終わりにすると、コーチに1回だけ教わったのと同じで、翌週には合わなくなっていきます。そしてAIは「結果はまだですか」とは聞いてきません。なので、いちばん手間の少ない返し方を決めておきます。
走ったら、その場で時計の画面を貼る
走り終わったら、時計のアプリの画面をスクリーンショットして、同じチャットに貼ってください。走ったルートの地図が写らない画面を選びます(地図には自宅の周りが写るので)。添えるのは一言か二言です。
AIは画像を読めるので、距離やペースを書き写す必要はありません。画像の回数に上限がある場合は、距離とペースだけ手で書いてください。
その場で送るのは、会話がどうだったかは時間がたつと思い出せないからです。予定では楽な日だったのに「短い返事がやっと」だったなら、それは楽な日になっていません。数字だけでは分からないずれを、この一言でAIが拾えるようになります。
週の最後の1本のあとに「来週を決めて」と送る
その週の最後に走ったら、時計の画面と一緒にこの文を送ります。走ることと結びつけておくと、送り忘れません。1週間ぶんの結果はもう同じチャットにあるので、まとめ直す必要はありません。
走れなかった週も、そのまま「今週は1回しか走れなかった。理由は仕事」と書いて送ってください。走れなかったことも、次の週を決める材料になります。
相談は、ずっと同じチャットで続ける
相談は、最初にテンプレを送ったチャットで続けてください。最近のAIは、前のチャットの内容をある程度引き継ぐ機能が標準でオンになっているものが多いです。ただ、何を引き継いだかは自分からは見えにくく、抜けることもあります。
画面が増えて今週のメニューが上に流れてしまったら、「今週のメニューをもう一度」と送れば出てきます。チャットが長くなってきたときや、新しいチャットになったときは、最初のテンプレと直近1週間の結果を貼り直せば、続きから相談できます。
※ 私自身は、後の「参考」に書いた仕組みで走行データを自動で取り込み、週に1回、次の週を決めてもらっています。手で返す場合は、この章の形がいちばん続けやすいはずです。
テンプレを送るのは1回目だけ。あとは走るたびに画面を1枚、週の最後の1本のあとに一言。
4. 返事が使いにくいときの言い直し
1回で欲しい形が返ってくるとは限りません。つまずき方はだいたい2つに決まっていて、それぞれ返す言葉も決まっています。
長すぎて読む気が失せた
そのまま「上位3つだけにして、理由は1行で書いてください」と返してください。AIは指定がないと丁寧に書きすぎます。長さは指定すれば従います。
結局、一般論に戻っている
「上に書いた私の条件から外れるものは、外した理由を書いて省いてください」と返します。省く作業を明示的に頼むのがコツで、これをしないとAIは候補を並べる方向に流れます。
長すぎたら長さを指定する。一般論に戻ったら、条件から外れるものを省かせる。
5. AIにさせないこと
便利ですが、任せてはいけない部分があります。2つだけ覚えてください。
痛みの判断はさせない
痛みが出たら、その日は中止してください。続けるかどうかをAIに相談して決めないでください。
とくに、走り方が変わるような痛み、48時間以上引かない痛み、走っている最中に悪化する痛みは、専門家に診てもらってください。AIは診察ができません。
数字と固有名詞は、出どころを聞き返す
気になる数字には「それはどこから持ってきましたか」と聞き返してください。答えが濁ったときは、その数字は使わない。
AIは、もっともらしい間違いをします。悪意があるわけではなく、そういう仕組みだからです。とくに日付・大会名・数値は間違えます。
出典が返ってきても、できればその先を開いて、本当にそう書いてあるかを確かめてください。私自身、この記事と前の記事を書くために調べたとき、検索に出てきたAIの要約が示した出典を開いたら、その数字がどこにも書いていなかったことが2回ありました。
怖がって使わないのではなく、聞き返す1手と、確かめる1手を持っておく。
6. 慣れてきたら:AIの使い分け
使い始めると、練習以外のことも聞くようになります。シューズの評判、大会の情報、練習法の是非。そうなると、AIごとの違いが出てきます。
調べ物では、情報の引き方で選ぶ
調べ物に使うなら、どこから情報を引いてくるかで選ぶのがおすすめです。3つとも、ウェブを検索して答えることができます。
| ChatGPT | 利用者が多く、使い方の情報を探しやすい。ウェブ検索もできる。迷ったときの1本目 |
|---|---|
| Gemini | Googleの検索と繋がっている。長い記事やPDFを読ませて要約させるのが得意 |
| Grok | X(旧Twitter)の投稿を検索できる。実際に履いている人の声など、記事になる前の情報を拾いやすい |
シューズの評判を知りたいなら、履いている人が集まっているXと繋がったGrok。長いレビュー記事をまとめて読ませたいならGemini。そういう選び方です。
シューズ選びにも使える
シューズ選びにも、同じ考え方がそのまま使えます。レビューは書いた人の用途も体重も違うので、読むほど評価が割れて見えます。自分の条件を渡して、候補を絞ってもらうほうが早い。
最後の1行を入れると、きれいな結論の代わりに、判断材料が返ってきます。体重は「50kg台」のように、だいたいで構いません。
ただし、候補の重さや価格などの数字は、5章に書いたとおり間違えることがあります。気になった靴が出てきたら、レビューで確かめてから選んでください。このブログでも、シューズのレビューを書いています。
練習の相談はどれでもいい。調べ物は、情報の引き方で選ぶ。靴の数字は、レビューで確かめる。
7. よくある質問
始める前に気になりそうなことを、3つだけまとめておきます。
Q. 無料のままでも使えますか 使えます。練習の相談程度なら無料の範囲で足ります。毎日使って回数の上限が気になってきたら、そのとき考えれば十分です。
Q. もう少し精度を上げたいです 1回で終わらせず、もう1つ聞いてみてください。「この内容で、私がつまずきそうなところはどこですか」と返すと、計画が崩れたときの対処まで出てきます。
Q. 自分には必要ない気もします すでにコーチがついている方、チームの練習メニューがある方には、たぶん要りません。独学で組み方に迷っている方、週2〜3回など一般的なメニューの前提から外れている方には効くと思います。
無料で始める。慣れたら、もう1つ聞いてみる。要らなければ、使わなくていい。
参考:私はここまでやっています
ここから先は、真似する必要のない話です。ただ「どこまでできるのか」の上限が見えていると、自分はどこまでやるかを決めやすくなると思うので書いておきます。
私は今、有料の開発者向けツールを使っています。スマホアプリのAIとは別物で、月額がかかります。走ること以外にも使っているので契約しているもので、走るためだけに払っているわけではありません。
やらせているのは3つです。
- 時計に記録された走行データ(距離・ペース・心拍)が、そのまま自動で取り込まれる
- 走った日の気温と湿度が、自動で紐づく
- 生活習慣(睡眠と安静時心拍)が、走っていない日も含めて毎日記録される
変わるのは、3章の「画面を貼る」がいらなくなる点です(会話の一言だけは、自分で伝えます)。実際に走った結果がそのまま次の週の相談材料になり、「先週は暑かったからペースが落ちただけで、走力は落ちていない」といった判断まで、数字を見ながら詰められます。
走っていない日のデータが効くのは、調子を崩す前に気づけるからです。安静時心拍が普段より上がり、それが寝不足では説明できない日が続いたら、その週の練習を見直す。走った日の記録だけを見ていると、これは分かりません。
ただ、この記事に書いたことは全部、無料のアプリでできます。自動化で増えるのは、走っていない日の変化まで見えることです。それがなくても、走るたびに画面を1枚貼れば、コーチとしては十分に回ります。まずそこから始めてください。
自動化で変わるのは、画面を貼る手間が消えることと、走っていない日の変化まで見えること。なくても、コーチとしては回ります。
今日やることは、テンプレを埋めて送るだけです。
そして走ったら、同じチャットに時計の画面を1枚貼ってください。コーチになるのは、そこからです。
私自身、まだ途中です。目安より速く走ってしまうこともありますし、気温の取り方を間違えていて、心拍の評価をやり直したこともあります。毎週の指示と走った結果は、X(@runpapa06)で出しています。
※ 痛みが出たら中止して、専門家に相談してください。
