ASICSの「TARTHER RP 3」は、長年培われてきた「自分の足で蹴る」という薄底レーシングシューズのDNAを継承しながら、現代のトレーニングシーンに合わせた最適化が施された一足です。カーボンプレート搭載の厚底シューズが市場を席巻する中、あえて自脚を鍛え、接地感を研ぎ澄ますためのツールとして再びシリアスランナーからの評価が高まっています。
Review
厚底時代にあえて履きたい、
自分の足で蹴る感覚を磨く薄底靴。
特におすすめなランナー
- 厚底に頼らず自分の脚を鍛えたい
- トラックやスピード練習を重視したい
- 接地感とダイレクトな反発が好き
まずは結論とスペックから
このシューズがどんな一足なのか、評価と基本データを先に押さえます。
こんな疑問を解消します
ASICS TARTHER RP 3 基本スペック
TARTHER RP 3の最大の特徴は、ミッドソールを「FF BLAST」へ刷新し、前作よりソール厚を約2mm増やしたことです。クッション性と耐久性を高めつつ、薄底ならではのダイレクトな接地感はそのまま残されています。
| 価格 | 16,500円(税込) |
|---|---|
| 重量(メンズ) | 約185g(メンズ26.5cm目安/公式、28.0cmの実測で約211gという報告あり) |
| ミッドソール | 合成樹脂(FF BLAST) + PROPULSION TRUSSTIC |
| アッパー | 合成繊維・合成樹脂(リサイクル素材採用) |
| スタック / ドロップ | ヒール約31.5mm / フォア約21.5mm(ドロップ10mm) |
| アウトソール | 3D TETRA SOLE + ASICSGRIP + AHARPLUS |
前作 TARTHER RP 2 からの進化
結論として、TARTHER RP 3で一番変わったのはミッドソールの厚みです。前作からFF BLASTの厚みを約2mm増したことで、極端だった底付き感が緩和され、トレーニングへの適性が大きく広がりました。
走った体感としては、前作の硬さがマイルドになり着地時の突き上げが軽減された一方、自分の足で地面を掴んで蹴るダイレクトな接地感は健在です。重量は約15g増えたものの依然として超軽量の部類で、ハーフマラソンなどやや長い距離でもスタミナが続きやすい絶妙なバランスへと進化しました。
各パーツの構造
ミッドソール
全面に反発性とクッション性に優れた「FF BLAST」を採用しつつ、部位によって硬度を変える設計です。前足部は比較的柔らかく柔軟性を持たせ、中足部の内側とヒール後部には安定感を高める硬めのフォームを配置。さらに中足部から前足部にかけては樹脂製の補強プレート「PROPULSION TRUSSTIC」が内蔵されており、シューズの過度なねじれを防ぎながら、蹴り出し時の強力な推進力と高い剛性を生み出しています。
アッパー
通気性に優れたエンジニアードメッシュを採用し、アッパー素材の75%以上にリサイクルポリエステルを使用。ハイスピード時でもシューズ内で足がブレないよう、中足部のホールド力を高めるタイトな設計です。標準装備の「パワーホールドシューレース」は結び目が柔らかくほどけにくい一方、それ以外は伸びにくく甲回りをしっかり固定。ヒールカウンターには薄くて硬いプラスチック芯材が内蔵され、踵をカッチリとホールドします。
アウトソール
路面状況や接地の役割に合わせて3種類の素材を使い分ける構造です。最も摩耗しやすいかかと部分にはASICS最高レベルの耐久性を誇る「AHARPLUS」ラバーを配置。前足部には立体的な網目状の突起が「点」で路面を強力に噛む「3D TETRA SOLE」を採用し、つま先部分には濡れた路面でも滑りにくい「ASICSGRIP」を配置しています。
買う前に知っておきたいこと
サイズ感・実際の使用感・耐久性と、寿命を伸ばす履き分けの考え方です。
サイズ感はどう?
先に結論を言うと、いつものASICSのランニングシューズと同じサイズで問題ないという声が大半です。レーシングシューズ特有の高いホールド感を持ちつつも、極端な窮屈さはなく微調整がしやすい設計です。
いつものASICSと同じサイズでOK
- 足幅(ワイズ):STANDARD(2E相当)に加えWIDE(3E相当)も展開。通常モデルはかかとから中足部がタイトです。
- 甲の高さ:標準的。伸びにくいパワーホールドシューレースと薄めのタンで、甲まわりの固定力は高めです。
- 他ブランドとの比較:Nikeやadidasの同サイズと比べると、前足部の全長がやや短めで幅にはゆとりがある傾向です。
- 特記事項:スピードを出した際の足のズレを防ぐため中足部のホールドはかなり強め。長距離で指先が当たる場合はWIDEも検討を。
実際に履いたランナーの声
国内外のレビューを横断すると、厚底に慣れたランナーからは新鮮な接地感として評価され、特にスピード練習における圧倒的なグリップ力と堅牢な耐久性に称賛の声が集まっています。
かかとのAHARPLUSラバーが全く削れず、合計1,300km走っても寿命が尽きないほどの耐久性がある
3D TETRA SOLEがトラックや雨に濡れたアスファルトでも強力に路面を噛み、蹴った力がそのまま推進力に変わる
硬めのヒールカップによるホールド感が抜群で、コーナリングや切り返しの際も足首が外側に倒れず安定している
一方で、次のような気になる声もありました。
厚底カーボンシューズのような強い反発や、トランポリンのようにポンポン弾んで進む感覚は得られない
強力なグリップを生む前足部の突起は、スピードを出して強く蹴り出すと300km前後で削れて平らになり始める
中足部がタイトな設計のため、足幅が広い人はWIDEモデルにしないと後半に窮屈さや小指の当たりを感じる
どのくらい走れる?耐久性の目安
レーシングシューズでありながら、練習用として非常にコストパフォーマンスの高い堅牢な作りを誇ります。
接地面はやや消耗が早いが、反発力は長く持続する
- かかとに配置された高耐摩耗ラバー「AHARPLUS」の耐久性は極めて高く、着地が丁寧なランナーであれば1,000kmを超えても使い続けられるという報告があります。
- 前足部の3D TETRA SOLEは「点」で接地する構造のため局所的な負荷がかかりやすく、スピード練習を重ねると300km付近から突起の角が取れ始めます。
- 突起が削れてグリップ力が落ち着いた後も、ミッドソールのFF BLASTの反発力やクッション性は急激にはヘタらないため、スピード練習用からデイリージョグ用へ用途をスライドさせれば長く履き続けられます。
履き分けの重要性
前のセクションで触れたとおり、TARTHER RP 3は用途を移行させることで長く使えます。ここでは他のASICSモデルとの組み合わせで、ローテーションでの立ち位置を見てみます。
JOG
デイリージョグやリカバリーの日
極厚クッションと内蔵されたPureGELによる着地衝撃吸収に定評があるシリーズ最新作で、TARTHER RP 3で酷使した脚の疲労を優しく回復させてくれるからです。
LONG
距離走やロング走の日
軽量でありながらFF LEAP/FF BLAST PLUSによるトランポリンのような弾む反発力と46.5mmの超厚底の保護力を備えており、脚へのダメージを抑えつつ長距離をハイペースで押し切る練習に最適だからです。
他の選択肢と比べてみる
練習メニュー別の相性と、ライバル2足との違いから最終判断します。
どんな練習に向いている?
結論から言うと、TARTHER RP 3が最も輝くのはペース走・インターバルなどのスピード系メニューです。ダイレクトな反発と路面を掴むグリップ力が光ります。
クッション性が控えめなため、疲労回復目的の低速長時間走行には脚への負担が大きくなります。
自然な前傾姿勢が取りやすくテンポの良いジョグには適しますが、厚底に比べると自脚の筋力が要求されます。
沈み込みによるレスポンスの遅れが一切なく、設定ペースを精密にコントロールしながら走るのに最適です。
3D TETRA SOLEの強力なトラクションと軽量性が、トラックでのスプリントやインターバルで最高のパフォーマンスを発揮します。
5kmや10kmの短いロードレース、薄底を好む上級者ならフルマラソンでも十分に戦力となります。
ライバルシューズとの比較
同じ用途で比較されやすい2足と並べてみます。
TARTHER RP 3と比較したいシューズを選ぶ
Nike Rival Fly 4 との違い
Rival Fly 4は、前足部にZoom Airユニットを搭載し、Cushlon 3.0フォームによる柔らかく弾むようなクッション性が特徴です。価格は11,000円とTARTHER RP 3より安価ですが、重量は約244gとやや重めです。TARTHER RP 3が「自力で硬い路面を蹴る感覚」を養うのに対し、Rival Fly 4は「エアの反発をもらいながら厚底ライクな走り方を練習する」用途に向いており、クッションの質と接地感が根本的に異なります。昔ながらの接地感と物理グリップで自脚を鍛えたいならTARTHER RP 3、コスパとエアの反発を求めるならRival Fly 4です。
adidas Adizero Japan 9 との違い
Adizero Japan 9は、フルレングスの最上位フォーム「LIGHTSTRIKE PRO」とナイロン製ドッグボーンシャンクを搭載したモダンな薄底シューズです。価格は17,600円、重量は約177gとTARTHER RP 3と同等レベルの軽さを誇ります。TARTHER RP 3が樹脂パーツの硬さとテトラソールの物理的なグリップで推進するのに対し、Japan 9は次世代フォームの反発弾性と滑らかな重心移動でスピードを出す設計となっており、より現代的で豊かな弾みを感じられます。昔ながらの接地感と削れるほど強力な物理グリップで自脚を鍛えたいならTARTHER RP 3、最新フォームの高反発を薄底で味わいたいならAdizero Japan 9です。
よくある質問
Q厚底シューズから乗り換えても怪我のリスクはありませんか?
A今作は前作よりミッドソールが2mm厚くなり、FF BLASTが最低限のクッションを確保しているため、いきなりの移行でも底付き感は軽減されています。しかし薄底特有の負担はあるため、最初は短い距離から徐々に慣らすことをおすすめします。
Q雨の日のトラックや濡れたアスファルトでも滑りませんか?
A前足部の3D TETRA SOLEとつま先のASICSGRIPの組み合わせにより、雨のトラックや濡れた路面でも非常に強力なトラクションを発揮します。スパイクのように路面を点で噛むため、滑る不安なくスピードを出せます。
Qワイドモデル(WIDE)はどのようなランナーにおすすめですか?
A甲高幅広のランナーや、通常モデルのタイトな中足部のホールド感が窮屈に感じる方、長距離走行時に足がむくんで小指が当たるのが気になる方におすすめです。フィット感が高いため迷った場合はWIDEも有力な選択肢です。
Qトラックレースでの使用(厚さ制限ルール)には対応していますか?
Aヒールスタックハイトが公式値で約31.5mmあるため、ワールドアスレティックス(WA)が定める「トラック競技におけるソールの厚さ20mm以下」のルールには適合していません。公認のトラックレースでは使用できないため注意が必要です。
Qアウトソールの突起が削れて平らになったらシューズの寿命ですか?
A前足部の突起が削れてグリップ力が低下しても、ミッドソールの反発力自体は意外と長く維持されます。そのため、スピード練習用としては寿命を迎えても、デイリージョグ用として用途をスライドさせれば引き続き長く履くことができます。
まとめ
TARTHER RP 3は、厚底カーボンシューズ全盛の現代において「自分の足で蹴り、自らの筋力で進む」というランニングの基本を再確認させてくれる貴重なレーシングシューズです。足首がブレない強固なホールド感と、路面を抉るような強力なグリップ力は、トラックでのインターバルやロードでのスピード練習において、ランナーの地脚を鍛えポテンシャルを底上げしてくれます。
一方で、シューズの反発力(トランポリン効果)に頼って楽に走りたい人や、極上の柔らかいクッションを求める初心者ランナーには向いていません。またソール厚が20mmを超えるためトラックの公認レースには出場できない点にも注意が必要です。厚底ライクな強い反発とクッション性を持ちつつスピードを出したい場合は、同ブランドの「SUPERBLAST 2」や「MAGIC SPEED」シリーズを代替案として検討することをおすすめします。
[プロフィール]
- ラントク運営 じぇーぱぱ
- 中学、高校時代は100mを専門に活動
- 中学:全国大会出場 高校:東海大会出場
- 現在は市民ランナーとしてサブ3を目指して活動
